奈良県総合リハビリテーションセンター

リハビリテーションのご案内

感覚統合療法(Sensory Integration)

当センターでは、作業療法士(OT)により感覚統合療法を行っています。感覚統合療法は、A.J.Ayres(米)により考案され、1980年代に日本に紹介されました。まず、感覚統合についてご説明いたします。

感覚統合療法室

感覚統合療法室

感覚統合とは?

自分の体を使ったり、道具を使ったり、人とコミュニケーションを取ったり…私たちは、無意識のうちに周りの環境とうまくかかわっています。これは脳に入ってくるいろいろな感覚を、うまく整理したりまとめたりすること→感覚統合がうまくいっているためです。

例)キャッチボールをしているとき、図のように、たくさんの感覚が脳に入ってきます。たくさんの感覚を脳でうまく整理すること(=感覚統合がうまくいくこと)で、私たちはうまくキャッチボールが出来ます。
逆に言えば、感覚統合がうまくいかないとキャッチボールは難しくなります。例えば、眼でうまくボールが追えない、からだをうまく動かせない、騒音や服の素材の感触が気になる、違うものに目が向き集中ができない、などです。

たくさんの感覚を脳でうまく整理する

どんな感覚が入ってくるのだろう?

味覚、嗅覚、視覚、聴覚などの感覚は、一般によく知られています。それ以外にも次のような感覚があります。

  • 触覚:皮膚で感じます。危険を察知したり、触って何かを確かめたり、痛み、温度、圧迫などの情報を脳に伝えます。
  • 固有受容覚:筋肉、腱、関節などで感じます。手足の位置や運動の様子、物の重さなどの情報を脳に伝え、姿勢を保持したり、体をスムーズに動かすために働きます。
  • 前庭感覚:耳の奥の前庭器官で感じます。平衡感覚ともいわれ、頭の傾きや動き、スピード、重力を脳に伝えます。目の動きに関連する働きもあります。

感覚統合療法

以上3つの感覚は、赤ちゃんがおなかの中にいる時から働き始めています。そして、成長と共にお互いに関連しあって自分の体がどうなっているのか(自分の体の地図:身体図式)を知っていきます。  触覚、固有受容覚、前庭感覚は、いろいろな活動を行うための準備体制を整えるのに重要な役割を持っており、感覚統合ではこれら3つの感覚を重視しています。図では、感覚統合が保育園、幼稚園、学校での活動(勉強、コトバ、集団行動、情緒など)を支える基礎になっていることを表しています。

感覚統合は多くの活動の基礎となる

図:感覚統合は多くの活動の基礎となる

感覚統合がうまく行われていないと?

感覚統合が十分に成熟していないと情緒面、対人面、学習面、言語面など問題が起こってきます。ここでは、いくつかの例を挙げます。

① 落ち着きがない
  • 周りの刺激(感覚入力)にすぐに反応してしまう。
  • 注意、集中ができないなど
  • 感覚統合療法
    ② 触覚、前庭感覚、視覚や音刺激に対して過敏である
    • 触られることを極端に嫌がる。
    • ブランコなど大きく体が揺れたり、不安定になることを極端に怖がる。
    • 新しい場所が苦手。
    • ドライヤー、泣き声など特定の音が嫌いであるなど
    感覚統合療法
    ③ 感覚刺激に対して鈍さがある
    • 頭を叩いたり、自分から強烈な刺激を求める。
    • 体の痛みに気づかない。
    • 声をかけても気がつかないなど
    感覚統合療法
    ④ 動作の協調性の問題(不器用)
    • 跳び箱、縄跳びやボール投げなどが大きな運動が苦手。
    • ひも結びや箸の使い方など細かな運動が苦手など
    ⑤ 言葉のおくれ
    • ことばが出ない。
    • 目が合わない、振り向かない。
    • 自分が思っていることをうまく言えない。
    • 助詞の間違いなど
    ⑥ 対人関係
    • 友達と上手く遊べない
    • ルールの理解ができないなど
    ⑦ 自分の行動をうまくコントロールできない
    • 待てない、すぐに怒るなど衝動的な行動をする。
    • 気分の切り替えができない、こだわりがあるなど
    ⑧ 自分に自信が持てない(心理的問題、二次的問題)

    感覚統合に問題があると、いろいろな活動に対して、失敗することが多くなります。周りからは「怠けている」「甘えている」といった見方をされることも多くあります。その結果、子供は自信がなくなり消極的になったり、逆に投げやりになったりすることもあります。

    感覚統合に問題があるかどうか、どうしてわかるの?

    自由な遊び場面での観察:

    姿勢やバランス、からだ全体をスムーズに動かせるかどうか、目の動き、感覚刺激に対する行動などを観察します。

    感覚統合検査:

    必要に応じて感覚統合に関係する検査を行います。

    保護者の方、園や学校の先生などからの情報収集:

    保護者の方から今までの発達の経過や現在の様子などをうかがったり、日常生活場面での感覚刺激に対する行動などチェックリストに記入してもらったりします。これらの情報をもとに感覚統合の機能について検討し、感覚統合療法をすすめていきます。

    感覚統合療法

    療法(セラピー)内容

    ① 子供たちが自分から求めている、楽しいと思える活動(やってみたい)を、

    ② 子供たち自身が自分から能動的に行い(やらされるのではなく)、

    ③ うまくいったと実感できること(成功体験)

    この3つがそろっている時、感覚統合機能が最も発達するというのが、感覚統合療法の基本的な考えです。そのため、感覚統合の活動内容は、子供たちが「とても楽しい」と思えるものになっています。
    作業療法士は、感覚入力をうまく整理し、子ども自身が色々なことに気がつけるよう、また適切に体を対応させていけるよう、感覚入力の方法(触り方、揺らし方など)を微妙に調節したり、関わり方を工夫したりしています。

    家や園、学校でのかかわり

    実際の感覚統合療法は作業療法士が行いますが、それだけで子供たちが生き生きと生活できるわけではありません。家や園、学校でのかかわりが最も大切だと考えます。家や園、学校などで困っておられること、問題と感じておられることは何でも作業療法士にご相談ください。アドバイスいたします。

    身のまわりのこと、お勉強のこと、手先のこと、その他

    感覚統合療法

    身辺自立(食事、トイレ、着替え、整容など)
    お勉強のこと(絵、文字がかけないなど)
    手先のこと(はしが持てない、はさみ、おりがみが苦手など)
    運動のこと(縄跳び、鉄棒、跳び箱、自転車が苦手など)
    その他どのようなことでも担当の作業療法士にご相談ください。アドバイスいたします。

    感覚統合についてもっと知りたい方は

    • みんなの感覚統合 -その理論と実践-:佐藤 剛、土田玲子、小野昭男編:パシフィックサプライ株式会社
    • 感覚統合 Q&A 改訂第2版 -子どもの理解と援助のために:土田玲子監修、石井孝弘、岡本武己編集:協同医書出版社
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